お金

退局代行とマイケル・サンデルの話

こんにちは、Kです。

退局代行というサービスがあるのをご存知でしょうか。

今となっては有名な退職代行の医師バージョンと考えていただくとよいのですが、医師の多くが所属する大学医局から離れる際の手続きやサポートを行ってくれるサービスのようです。

組織を辞めるということは、個人にとってはもちろん一大事ですが、組織側としても働き盛りの医師を失うことになるわけですから出来れば避けたい事態のようで、人によってはなかなか承認を得られなかったり、はたまた数年の待機期間を課せられたりといった様々な苦労がある…という噂です。信じるか信じないかはあなた次第、ですが。

このあたりの対応を速やかに完了まで持っていってくれるのが退局代行、というわけですね。

相場はだいたい3万円〜5万円ほどで、一般的な(?)退職代行と同程度とのことです。

決して安くはない金額ですが、人によっては大きなメリットを感じられるサービスなのかもしれません。

ちなみに私の場合は、この退局代行を利用することなく、比較的スムーズにフリーランスへの道を踏み出した…と自分では思っていますが、もちろん状況が少し違えばお世話になっていた可能性はあります。

退職代行サービス自体が2017年頃に生まれたサービスと言われており、退局代行はそれより後に見出された事業と思われますので、本当にここ数年で様々なモノやコトがビジネスになる時代にきているんだな、と感じます。

先日、こんな本を読みました。


『これからの「正義」の話をしよう』などで有名な、ハーバード大学教授のマイケル・サンデルさんの書いた「それをお金で買いますか 市場主義の限界」という本です。

本書では、現代において様々なモノやサービスがお金でやり取りされていることを例示した上で、市場主義が我々の生活に深く入り込むことによる功罪に関して述べられています。

例えば、「刑務所の独房の格上げ:1晩82ドル」、「インドの代理母による妊娠代行サービス:6250ドル」や「額のスペースを広告用に貸し出す:777ドル」なんてものまで紹介されています。

主治医の携帯電話の番号:年に1500ドル〜」というのもありました。安いんでしょうか、高いんでしょうか…。

これまで倫理や道徳的な意識で行なわれていたことにまで市場的な考え方が介入することでその価値が腐敗してしまったり、あらゆるものが市場化することによって経済的に豊かな人による搾取が助長されてしまう危険性などに関して、マイケルさんの考えが書かれています。

別に私は、退職代行や退局代行が何かを貶めている、などというつもりは全くありません。ただ、これはまさに、従来には考えられなかったモノやコトの中に市場主義が浸透しつつあることの一例なんじゃないかと感じました。

これからも、様々なサービスが生まれ、我々の生活も少しずつ変わっていくことと思います。

その是非に関しては結局のところ、個々人の判断に委ねられることになりますが、自分が何にお金を払うべきなのか、また、何にお金を払うべきではないのか、という軸を今のうちにちゃんと作っておかないと、我々は簡単に時代の流れに飲み込まれてしまうんじゃないかな…なんてことを考えながら、本を読み終えました。

皆さんはこれから何をお金で買いますか。

以上、退局代行とマイケル・サンデルの話でした。