こんにちは、Kです。
私がフリーランスになってよかったなと感じることのひとつに、「読書の時間を増やせた」というのがあります。
元々、本を読むことが好きだったのですが、勤務医時代は日々の業務に追われ、医学書以外の本をじっくり読む時間はなかなか確保できませんでした。
その鬱憤を晴らすために現在は精力的に読書をしています(自分比)。
そうすると「この本にもっと早く出会えていれば…」と感じる書籍に出会うことがよくあります。
今回は、そんな中から、「これは医学生のうちに出会っておきたかった…」と強く感じた本をご紹介します。医学書ではありません。
経営危機にあったUSJをV字回復に導いたマーケティングの達人、森岡毅さんの著作、「苦しかったときの話をしようか」です(実際は、この本が出版されたのは2019年なので私が医学生・研修医時代に出会う可能性は0でした)。
タイトルの「苦しかったときの話をしようか」だけを見ると、森岡さんの「苦しかったときの話」をまとめた本なのかなと思っていたのですが、それはあくまで本書の内容の一部に過ぎず(本当に苦しそうでした…)、主に書かれていたのは「どうやって自分のキャリアを築いていくべきか」という森岡さん流のキャリア論でした。
元々は、森岡さんが就活を前にして悩むご自身の娘さんに向けて伝えたいメッセージをまとめていたことがきっかけになって生まれた本だそうです。
本書の主張を非常にざっくりとまとめると「自分の強みを把握し、それを活かせるようにキャリアを築いていけ」ということ。
そのためにできることは
①己の特徴の理解すること
②それを磨く努力
③環境の選択
この3つに尽きる、と森岡さんは本書で述べています。
医学部の学生さんの場合、たいていの人は卒業後に医師として働き始めるでしょうから、我々の場合のキャリア構築というのは「どの科を専門とし、どの組織に所属したりしなかったりして、自分の目的にあった働き方を獲得するか」ということになってくるでしょう。
考えてみると、自分の強みを基準に専門や進路を決定している医師は少数派かもしれません。
「〇〇科はかっこいいから」「〇〇科は楽そうだから」など、自分の特徴や能力とはある意味全く無関係の、外的要因に沿って自分の行く道を決めてしまう人がほとんどです。
また環境選びに関しても、例えば初期研修先選びに関しても「どこで研修を自分の強みを伸ばせるか」ということを考えないわけではないのでしょうが、どちらかというと「○○病院は人気だから」「給料が高いから」「楽そうだから」といった、これまた外的要因に判断基準を委ねてしまう場合が多いのではないでしょうか。
かくいう私も、振り返ってみると医学生時代は本当に何も考えていない阿呆な学生だったように思います。
ただ、初期研修中に自分の好きなことや得意なことを考えた際、「問題解決のための道筋を考えて、人に提案すること」というのが向いているんじゃないかと考え、それにマッチした代謝内科という専門を選ぶことになりました。
また、その後、何の気無しに受けた産業医研修会で「自分のやりたいことはコレだったのかもしれない」と気づくことができ、今は産業医としてのキャリアも歩み始めることができています。
考えてみると、結果的に、何となく、偶然に「自分の強みに沿った仕事選び」をしていたように思えてきます。本当にラッキーでした。
森岡さんは、「自分の特徴を認識してそれを伸ばす努力をすること」を「宝を磨く」と表現しています。
私はキャリアの途中で自分の特徴を認識することはできたのかもしれませんが、一方で、それを伸ばすことができるようなキャリアパスを意識的に選ぶようなことはこれまで出来ていなかったように感じています。
組織を離れてフリーランスになった今、やっと自分に様々な選択肢が戻ってきたことを嬉しく感じています。
それでも本書を読むと、もう少し早くから自分の“宝”に気づき、それを”磨く”努力をしていたら、今頃また違った景色が見えていたのかも…と感じずにはいられません。
その意味で、これから進路を決める若手の先生方が、今この本を読むことができることを大変羨ましく感じています。
もちろん、私のようにすでにキャリアを歩み始めた医師でも遅すぎることはないと思います。いつだって常に「今」が、今後の人生で最も若い瞬間ですから、今から頑張れば5年後、10年後の未来は変わってくることでしょう。
「自分は今の科に向いてない、そもそも医者に向いてないんじゃないか?」と悩んでいる若手の先生。
安心して下さい。そう考えるのってめちゃめちゃ普通のことです。
10代、20代で一生通用する決断が出来る人の方が少数派なんです。
大丈夫です。人生は、その気さえあれば何回でも仕切り直せますよ。
— 内科医 K (@naikaiK) May 14, 2022
「成功は必ず人の強みによって生み出されるのであって、決して弱みからは生まれない。」
森岡さんのこの言葉は、今となっては有名ですね。
では、自分の強みとはどのように見つければいいのか、強みを伸ばすためにどのようにキャリアを築いていけばいいのか、については本の中に詳しく書かれていますので気になった方はぜひ手に取っていただければと思います。
そういえば余談ですが、本書の中で、キャリア構築における異なる能力の獲得に関して、つい先日、自分が考えていたのと近いことが本の中で述べられていたのでなんだか嬉しくなりました。
「全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうち2割の要素が生み出している」というパレートの法則。
医師は1つの分野に100の努力を費やして100点を目指しがちですが、20の努力で80点を、異なる分野で5つ取るのも悪くない戦略かと。
多彩な点がつながって面白い線を描くこともある…と思ってます。
— 内科医 K (@naikaiK) June 4, 2022
この本が、皆さんが自分の“宝”を見つけ、それを”磨き”始めるきっかけになれば幸いです。オススメの一冊です。
以上、「キャリアに悩む医学生、若手医師にオススメしたい本の話をしようか」の話でした。