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未来妄想 ”医師”アカデミー

先日、本屋さんで医学書を物色してて思ったことなんですが、現代ほど医者の自己学習環境が整っている時代は無かっただろうな…と。

実は、この医師の学習環境の変化が、医局の栄枯盛衰に及ぼしてる影響がでかいんじゃないか、ということと、この先に起こりうる流れについて妄想します。

一昔前は、医学書といえば海外の分厚い書籍を読みづらい翻訳で読むしかなく、そもそも普通の本屋ではお目にかかれない。論文は限られた環境でしか手にすることもできない。そんな環境では、医局などの大きな組織に属して、先輩医師にひたすらに教えを乞うのが、最も「コスパがいい」方法だったはず。

学会も極めて重要な行事だったはずです。特に地方で仕事をしてる医師にとっては、最新の学術研究の情報はもちろん、他の先生が何を考えどのように普段の診療しているのかを知る機会は非常に重要だった。なので、今の管理者世代の先生達の、学会参加への熱意は若手とは比べ物にならない。

あれから40年。

大型書店に行けば医学書コーナーで日々読みやすい参考書が並べられていて、近所に書店が無くてもAmazonで注文し放題、論文はネットで簡単に読めるし、どれも電子化して手の平で持ち運び可能。手技のお手本も簡単なものなら動画サイトで閲覧できるし、医師会員サイトやSNSで他の医療者の考えも聞ける。

要は、それまで医局などの限られた集団に所属していないと得られなかった情報が解放されてしまった。 今や、本人のやる気と多少の金があれば、誰でもこの世のほぼ全ての医学的“知識”にアクセスできる状態ですね。 情報取得という観点において、医局所属は「コスパがいい」方法では無くなってしまった。

残された宝は、医学的“経験”で、これを医局&学会の偉い人達は死守しようとしているように感じます。 専門医・指導医資格の取得や維持のための要件が年々ややこしくなっているのはそのせい。 ただ、それもいつまで続くか。

ところで、「すしアカデミー」ってご存じですか?

「東京すしアカデミー」は短期間でプロの技術を叩き込む寿司職人養成学校。 その大阪校の卒業生と生徒が切り盛りする「鮨 千陽」は、開店からわずか11カ月でミシュランを獲得し話題になりました。 何が言いたいかというと、そのうち医学版「すしアカデミー」が現れるんじゃないかと。

経験豊富な医師を指導教官として数人置き、効率的なカリキュラムで知識をつけつつ、生成AIを駆使した大量の模擬患者で模擬診察&模擬診療、拡張現実を用いたシュミレーターで日々トレーニング。 研修施設では数年かかっていた自己研鑽が数ヶ月で完了。

※もちろんこれには多額の資金が必要な一方で、医師というマーケットの小ささを考慮すると儲かるのは至難の業なので、実現可能性は低いですが、もしかしたら酔狂なお金持ちの先生が、後世への使命感、もしくは単なる遊びのつもりで、ポンとお金を出す日がくるかもしれない。

当然、専門医資格の認定要件は付与されないが別に困らないかも。 総合病院で長時間待って専門医から95点の診療を受けるより、近所の医者でササッと80点の診療を受けることを選ぶ人は確実にいるので。 今、専門医資格の有無を報酬に反映させるべきという意見があるが、それはこの流れを加速させるかも。

次第に「いしアカデミー」が勢力を増し、各専門医資格は徐々に形骸化、誰も医局に入ろうと思わなくなった、という未来がくるかもしれない…いや、多分来ないけど。 ただ、近しいイベントが発生する可能性は0ではないかも。 なんてことを妄想しつつ、数冊の医学書を購入して本屋を後にしました。