こんにちは、Kです。
私が一つの組織に常勤しないフリーランス医師になってもうすぐ1年半が経過しようとしています。
フリーランスになるにあたり、これまで経験したことのない仕事や、働き方にチャレンジしてきました。
そんな私が、これだけは一生しない(したくない)と考えている業務があります。
当直バイトです。
フリーランス医の先生の中には、むしろ収入源として当直バイトを中心に据えている方も多いです。
ただ、私は今のところ、当直バイトをする予定はありませんし、このまま一生しないで過ごせれば…と思っています。
人生最後の(で、あってほしい)内科救急当直が終了しました。
さようなら、全ての救急隊員。 pic.twitter.com/pMddQXVBfE
— 内科医 K (@naikaiK) March 25, 2021
当直をしない生活になってからもうすぐ1年が経ちます。
この1年を振り返ってみました。【当直をやめて良かったこと】
・スケジュール管理が容易に
・快適な睡眠
・余暇の増加
・ストレスの軽減【当直をやめて困っていること】
・二度と当直をしないという決意が固まってしまったこと— 内科医 K (@naikaiK) March 1, 2022
もちろん、夜間救急は世の中に必要なことだと思いますが、私よりも当直業務が得意、かつ楽しいと感じる先生はたくさんいるはずなので、私が当直バイトを嫌々やるのは自分にとっても社会にとってもいいことはないんじゃないかな…と考えています。
今回は、なぜ私がこんなに当直を嫌っているのか、その4つの理由を、誰に頼まれたわけでもありませんが、勝手に語ってみたいと思います。
理由 その1 身体に悪いから
皆さん、薄々わかってらっしゃるかと思いますが、当直は健康を損ないます。
国際がん研究機関(IARC)は2019年、「夜勤(night shift work)」を、4つの発がん性分類のうちの上から2番目である2Aに分類しました。
理由としては、夜勤勤務によって生活リズムが乱されることによって乳癌・前立腺癌のリスク上昇に寄与している可能性があることが挙げられています。
ちなみに、この2A、分類としては除草剤と同等で、エンジンの排気ガスや鉛などよりも高い分類になっています。
あと、夜勤をすると太ります。
夜勤と代謝因子の関係を調べた研究によると、夜勤従事者は、日勤従事者と比較してBMI、総コレステロール、中性脂肪の数値が有意に高値であった、という研究結果があります。
当直って、ただでさえキツいのに、頑張れば頑張るほど不健康になっていくのって辛すぎませんか。
理由 その2 翌日に支障をきたすから
これも周知の事実だと思いますが、睡眠不足は脳のパフォーマンスを落とします。
仮に一晩中、眠れない夜を過ごしたとして、24時間覚醒した脳の注意力は、血中アルコール濃度0.1%のほろ酔い〜酩酊初期と同程度まで低下すると言われています。
「いや〜昨日は忙しくて一睡もできなかったわ〜」と同期にイキっている場合ではありません。あなた、ほろ酔い状態です。これから本当に車で帰るつもりですか?え、午前中からオペに入るんですか?本当に?
フリーランスとして仕事をしていると、様々な職場でお仕事をもらうことになります。
各職場にとっては、そこで行う業務に対して報酬を支払ってるので、前日に別の職場で夜勤をしていたからという理由で、ほろ酔いと同等の状態でこられても困るわけです。
診られる患者さんもたまったものではないでしょう。
例えば、逆の立場で、美容院に予約を取って行ったら、美容師さんがほろ酔い状態で出てきたりしたら嫌じゃないですか? 私は嫌です。
安易な当直バイトは、受けた仕事は責任を持って行う、という当然のことにも支障をきたします。
「次の日、休みだったらいいじゃん」と思われるかもしれませんが、休みの日くらい遊びたいのです。休みの日くらい遊びたくないですか?
私の場合、お休みの日を有意義に過ごすために仕事をしているのに、仕事のために休みを犠牲にするのは本末転倒なのです。
理由 その3 報酬が労働時間に見合わないから
以前、Twitterでこんなことをつぶやいて賛否両論でした。
当直代、時給1万円は最低でも出すべきだと思うんですよね。
— 内科医 K (@naikaiK) June 15, 2022
医師の外勤のアルバイトの場合、相場はだいたい時給1万円くらいです。
ただ、夜勤で同程度の給料を出してくれる案件はあまり多くありません(地区にもよりますが)。
それどころか、病院によっては一晩で2,3万円、たまに1万円未満で募集しているところもあります。
もちろん、日勤の外来業務のように常に患者対応が必要な夜ばかりではありませんが、それでも医者一人を一晩中拘束するには、ちょっとそれは…と感じる額です。
それなら、当直業務なんて一切やめて、夜はぐっすり寝て、日中に報酬に見合ったパフォーマンスの仕事をしたい、と思うわけです。
理由その4 時間がもったいないから
フリーランス医界隈では、すごい先生がたくさんいて、「時給1万円換算の当直なんて簡単に見つかるよ〜」という方もいます。
なので「お前も頑張って、いい値の当直の仕事見つければいいじゃん」と言われるかもしれません。
いや、もう、それは面倒臭いのです。
前述のように、当直が心身にいい影響を及ぼさないことがハッキリしてるのに、わざわざ時間をかけて求人サイトの中から良さげな案件を探して応募して、採用・不採用のやり取りをして、職場を調べて…みたいな時間全てがもったいないのです。
そもそも私にとって、夕方から夜にかけては家族とリラックスして過ごせる貴重な時間です。
たとえ当直によって得られたお金で、経済的自立への時間がほんの少しだけ短縮されるにしても、そのために“今”を犠牲にする気には全くならないのです。
以上が、私が当直バイトを毛嫌いしている4つの理由でした。
もちろん、自分の意思とは裏腹に、常勤先の当直をしなければならない先生もたくさんいると思います。私もそうでした。不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません。
先述の通り、夜間救急外来は世の中になくてはならない存在です。
常勤先で割り当てられた当直業務は、しっかりと責任を果たして行うべきだと思いますが、それをわざわざ自分から背負い込みにいく必要はないんじゃないかな…というのが私の考えです。
当直が好きで好きでたまらない、という素敵な先生も世の中にはたくさんいて、たいていの案件はそんな先生方が担ってくれます。
苦手な当直業務は得意な先生にお任せして、自分は自分のできることで各職場に貢献したいと考えています。
我々は配られたカードで勝負するしかありませんから、自分の能力の輪の境界線を見極めて、苦手なことは外注して、自分は自分にできることに集中するべきです。 pic.twitter.com/HkarUNvFDR
— 内科医 K (@naikaiK) July 25, 2022
もし、フリーランス医を検討している方の中で「フリーランス医たるもの、当直を主軸に仕事を組んでいく必要があるのでは…!」と考えている先生がいたら。
当直しなくても、意外と食っていけますよ。
以上、当直バイトをおすすめしない理由の話でした。