現在、私はフリーランス医として、5種類ほどの分野が違うお仕事をさせてもらっています。
どれも医師免許との関係がある仕事であるため、医師としては医師なのですが、それぞれの働き方のスタイルや、求められる知識の種類などは結構バラバラです。
私のように複数の仕事を並行して取り組む働き方を「複業」、もしくは「パラレルキャリア」と最近では呼ぶようです。
なぜ私自身が複業という働き方を採用しているかというと、「複数のアイデンティティを形成できる」というメリットがあると考えているからです。
医師という職業は、どうしても一人の人間の中に、割と大きなスペースを占めてしまいがちなように思います。
それは、人の命に携わる仕事という職業上の性質や、その業務量、そして世間や自分が培ってきた医師へのイメージなど、様々な要因が影響を及ぼしているからだと考えていますが、まぁ、ともかく。
もちろん、「自分は〇〇科の医師としてやっていくんだ、これ一本で食っていくんだ」というのは立派だと思いますが、そう考えているときって、「自分は〇〇科の医師としてやって」いけなかったときや、「これ一本で食って」いけなくなったときのことまでは、あまり考えませんよね。
実際、プロのスポーツ選手のように、自分の人生を一つのことに捧げてきた人の場合、引退後はアイデンティティの喪失に悩むケースが多いと聞きます。
アイデンティティについて研究するデューク大学フークア経営大学院の教授、パトリシア・リンビルは、さまざまな側面がある人(すなわち、「自己複雑性」が高いとリンビルが呼ぶ人)は強いストレスに晒されても、うつ病や身体的な病気になりにくいことを明らかにした。
一方で、自己複雑性が低い人は強いストレスに晒されると、その影響が仕事以外の生活面にも波及してしまいやすい。
つまり複数のアイデンティティを持っている人の方が、心身ともに健康に人生を過ごしていけそう…ということですね。
また、投資の格言で、「卵は一つのカゴに盛るな」というのがありますが、これは仕事にも言えるのかもしれません。
卵が資産の比喩だとすれば、「鶏は一羽だけに頼るな」などになるでしょうか。
ChatGPTなどに代表されるAI技術革新によって、本当に先の読めない時代になってきました。
これまで一生懸命頑張って続けてきた仕事が、来年には無くなる…なんてこともあるかもしれません。
もしくは、AI云々の話以前に、長年貢献した勤め先が倒産…なんてこともなくは無い話です。
複数の仕事に従事する、複業という働き方は、そんなときの安全装置として機能してくれるんじゃないかと思ってます。
つまり、まとめると、私は、複業という働き方には、健康的にも経済的にも、長期的なメリットがあるんじゃないかと考えています。
もちろん、手当たり次第に様々な仕事に就く、というのは効率の観点からお勧めできませんが、自分が興味をもっている分野が複数ある場合、必ずしも一つに決める必要はないのではないでしょうか。
仕事という領域において、自分という資本を分散投資することで、長く市場に生き残る。
そうすることで、一つの仕事に一極集中投資して成功したときほどの大勝ちは見込めないけれど、けっこう悪くないリターンが得られるんじゃないか、なんて楽観的なことを思い描いています。
長くなってきたのでこの辺で。
以上、「複業」という選択肢について、でした。